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#2 専門家に聞く「お宮参りの作法」

【特集:お宮参り】#02

時代ごとに意味合いやスタイルが変わってきた「お宮参り」ですが、現在のお宮参りにおいて、守るべきマナーとはどんなものがあるのでしょうか? ふたりのお子さんのママであり、テレビなどでもおなじみのマナー研究家・住友淑恵さんに、現代版“お宮参りのお作法”についてうかがいました。

◆なぜ神社に行くのか? 「氏神さま」とは?

「冠婚葬祭の4文字のうち、「成長の祝い」を示すのが「冠」。昔、元服の儀式にかぶった冠が、由来になっているといわれています。この成長の祝いは、すべて神式で執り行います。お宮参りの“参り”というのは、神様に“報告をしに行くこと”なんですね」(住友さん)

では、どこの神社へ行くのか? というと、可能であれば、住んでいる土地の神様である「氏神」へ行きましょう。実家などで出産された場合、その土地の氏神……と考えてしまう方もいるのですが、基本的には「自宅」を基準に考えるのが一般的です。

「ちなみに、各都道府県の神社庁に連絡し、自宅の住所を伝えると、自宅近くの氏神となる神社を教えてくれますよ。あとはその神社へ連絡し、必要であれば予約をしておきましょう」(住友さん)

◆日取り決め──大安などの六曜を考慮した方が良い?

お宮参りは、男児は誕生から30日目以降、女児は同じく31日目以降に氏神へ行くのが習わしです。

「一般には、“天気の良い大安”の日が良いといわれていますが、そうした日取りは人気が高く、神社によっては予約が取れないことも。できれば早めに調べておき、日程を予約しておきたいところです」(住友さん)

◆お宮参りに行くメンバーは?

祈祷やお祓いは、子どもだけでなく、家族全員でしてもらうもの。できれば、ママやパパだけでなく、おばあちゃん、おじいちゃんなど、家族みんなで出掛けるのがベターです。

「せっかく家族が大勢集まる良い機会ですから、写真館で集合写真を撮ったり、食事会を設けたりと、“イベント感”を持たせたいところ。こうした節目があると気持ちが新たになり、生活にも張りが出てきます。子育て中にイライラしていても、神前でのおごそかな儀式で心もリセットされるでしょう 」(住友さん)

◆神社への謝礼額は?

相場は1万円のようですが、神社によって異なります。今は、神社側がきちんと教えてくれますので、予約する際に臆せず聞くといいでしょう。

「なかには『直接、神社に尋ねるのは失礼ではないか?』と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実際に尋ねてみると、神社の方も快く教えてくれます。
ちなみに、謝礼の指定額が高額な神社もあります。その違いはなにかといえば、授与される品々。そうした神社では、神棚や豪華なアルバムなどをいっしょに渡してくれるようです」(住友さん)

◆知人や親戚からのお祝い&お祝い返しのマナー

お宮参りのお祝いに対しては、内祝いで返します。

その際、重要なポイントは、お祝い返しのタイミング。内祝いの場合、もらってすぐに返してしまうと「なにか嫌なことでもあったのかな?」と、とられてしまうことも。そのため、1カ月くらい時間を空けてからお返しするといいでしょう。

「お祝い返しの金額については、いただいた額の半額や1/3くらいが相場だといわれています。ただし個人的には、金額にはあまりこだわらなくていいと思います。私の実体験ですが、出産祝いに5000円を包んだ際、お返しで7000円くらいのものをいただいたことがありました。それがとても印象に残ったのです。

マナーは心意気。いわばコミュニケーションツールです。こういったお祝いごとは相場にこだわらず、相手とどのように付き合いたいかを考え、気持ちを表すことが重要だと思います 」(住友さん)

◆当日、必ず準備したい持ち物

神社に予約をした際、必要な持ち物を教えてくれます。

「初穂料、金封(のし袋)、祝着(産着・初着)、内着に使う白羽二重(しろはぶたえ)やセレモニードレスなどが必須となります。特に祝着は、神社でのご祈祷の際に使用するので、必ず準備するようにしましょう 」(住友さん)

そのほか、季節ごとに赤ちゃんのおくるみや着替え、日よけなど、基本のお出かけ用具は持参しましょう。

「赤ちゃんは、体温調節がうまくできません。寒い日の防寒はもちろん、暑い日に重ね着して汗びっしょりになっていることに気づかず、脱水症状になる恐れもあります。気候に応じた準備を整えましょう」(住友さん)

◆初着&着物のルール

赤ちゃんは、白羽二重の内着を着せ、その上から祝着を掛けるのが一般的です。また最近では、白羽二重の内着ではなく、白いベビードレスを着せて祝い着を掛けるスタイルも人気です。

「内着選びのポイントは、色を意識すること。結婚式の白無垢と同様、神前での服装の色は“白”が基本になります 」(住友さん)

実は祝着には、絵柄などにそれぞれ意味があります。このあたりは別ページで詳しく解説します。

「またお子さんだけでなく、父母や祖父母も神前にふさわしいフォーマルな格好が望ましいですね。ママやおばあちゃんは格の高い”訪問着”が一番良いです。父親や祖父は和装であれば、こちらも格式の高い”羽織袴”が良いでしょう」(住友さん)

【教えてくれた人】

マナー研究家 住友淑恵さん(マナ美先生)

大学在籍中から、マナーの第一人者・酒井美意子先生に師事し、和洋の正統マナーを学ぶ。大手芸能プロダクションでの人材育成や、各種企業での研修、大学での講演など、活躍の幅は多彩。テレビ出演のほか、書籍・書籍の寄稿、監修、執筆も多数。令和時代におしゃれに楽しくエンターテイメントマナーを教えるマナー講師。近年は、日本のマナー評論家である故・酒井美意子先生の孫弟子で15年以上、数々の書籍などを監修してきた。そのマナー研究家「住友淑恵」さんが総合プロデュースするマナーパフォーマーとしての顔が「マナ美」先生。全国の学校や企業でマナーを簡単わかりやすく楽しく伝える「マナーショー」を実践。大切にしているメソッドは「マナーとは心の色表現」。
著書に「一生使える!冠婚葬祭マナー」(PHP出版)ほか、がある。

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19.06.07
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