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着物のTPOについて【フォーマル着物版】

着物と一口にいっても、着るシーン、着ていく場所、目的、一緒にいる人との関係など によって着る種類が変わります。これが大まかな着物のルールになります。「(ルールが あるから)着物は大変、難しい、よくわからない」とおっしゃる方も多いようです。でも 、ちょっと待ってください。「平服でどうぞ」といわれても結婚披露パーティにジーンズで出席する人はいないはずです。

着物も同様です。ただ、日常的に着用しないため、こうしたルールがわかりにくくなっているだけ。基本を押さえれば着物の種類とTPOは実に シンプルで分かりやすいものになっています。    

では、さっそく着物の種類と着用シーンを紹介します。

今回は、フォーマル着物をご紹介いたします

振袖

フォーマルといえば、まず振袖です。

ミスの第一正装とされ、優雅な長い袖、あでやかな色と豪華な柄付けは着る人を引き立て、場を華やかに彩ります。袖丈が長いほど格が高 いのですが、大振袖は125㎝から106㎝、もっとも格が高くなります。花嫁衣裳や成人式で 着用されます。袖丈が87㎝から106㎝の中振袖は成人式や各種パーティで着用されます。 小振袖は袖丈が76㎝から86㎝。パーティだけでなく、13参りなどにも着用されます。

黒留袖


ミスの第一正装です。

ただし、黒留袖は祝儀のためのフォーマル着物です。背中心、両胸、両外袖に日向紋を染め抜き、裾には染めや箔、刺繡で吉祥文や有職文が鮮やかに描かれています。仕立ては比翼仕立てにし、着物を二枚着ているよう
に見せます。黒い表地に白い比翼は凛とした美しさを演出します。
ことに披露宴などでの会食で着席すると上半身しか見えなくなりますので、比翼仕立ての白い襟が顔周りに明るさをもたらします。
大人の女性の式服でしたが、現在では結婚式に出席する新郎新婦の母親、親族の既婚女性(新郎新婦との関係が近い親族、主におばや祖母など)や仲人夫人が着用することが多い着物です。着用の際は儀礼用の末広(祝儀扇)を忘れずに持ちます。

色留袖

黒留袖が黒地なのに対して色留袖はさまざまな色があります。未婚女性も着られるという意味では着用する幅の広いフォーマル着です。色留袖の場合は5つ紋、3つ紋、1つ紋をつけます。紋の数によって格が変わるのですが、5つ紋をつければ黒留袖と同格になります。したがって、親族の女性が結婚式でも活用できます。また、謝恩会で卒業生を送る担任がさりげなく装うのも素敵な着方でしょう。なお、叙勲やノーベル賞受賞時の晩餐会なども色留袖が着用されます。

訪問着

色留袖の次に格がある訪問着ですが、色留袖が裾模様であるのに対して、おしゃれの要素を持つ訪問着はより華やかな柄付けになります。この華やかさの要因は柄付け。一度、仮仕立てをしてから模様の位置を決め、その後仕立てるため縫い目を越えて柄がつながる、いわゆる絵羽仕立てになります。店頭ではこの仮仕立ての形で販売されます。
未婚、既婚問わずに着用できます。名称は大正時代に洋装のビジティングドレス(訪問する際のドレス)に対応するものとして名付けられたものです。最初は3つ紋をつけていましたが、現在は1つ紋、もしくはおしゃれ着の要素を強くし、付けないものも多くなってきました。披露宴、茶会、見合い、結納、パーティなどに向いています。

付下げ

縫い目で模様がつながっている訪問着に対して、縫い目で模様がつながっておらず、着用したときに柄がすべて上方向に向いているのが付下げです。柄は訪問着よりも控えめになります。小紋より格はありますが、訪問着よりも気軽に着られる着物です。七五三や入学式の付き添い、お茶席など控えめな雰囲気が求められる場面にぴったりです。華やかな柄を選べば、友人や先輩、後輩として披露宴に出席できます。なお、訪問着が仮絵羽で販売されていますが、付け下げは反物の形で販売されます。

黒紋付

喪服として使われることが多く、葬儀、告別式での正装です。地紋のない黒一色で長襦袢、半襟、足袋はすべて白になります。帯は二重を避けるため、袋帯ではなく名古屋帯です。草履、バッグも黒で統一します。
黒紋付=喪服と思われがちですが、黒紋付は式服としての伝統があります。明治時代、 黒紋付は袴と合わせて女学校の式服として使われていました。現在も宝塚音楽学校の卒業式は黒紋付に袴です。お囃子や和楽器演奏などでも使われます。また、男性では黒紋付は第一正装。普段、浴衣の力士もフォーマルシーンでは黒紋付です。

20.06.01
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