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なじませて、すっきり・ふんわり帯揚 ビシッと効かせて帯締

帯を固定し、着崩れを防止する重要な役割を果たす帯締と帯揚。「単なる紐でしょ、帯揚なんて、ほとんど見えないでしょ」といわれればその通りですが、実は着物のセンスを図る上で侮れない存在です。帯締は身体のほぼ中心にくるので、立ち姿では一番目に入る部分です。帯揚は正面からよりも横姿で色や模様がはっきりとわかります。それらのセレクトで上品か野暮かが問われるところ。帯締と帯揚がセットになっているものもありますが、この二つは同じ色でなくてもかまいません。同じ着物と帯でも、帯締をひとつ変えると全く違う雰囲気になります。

礼装には礼装の帯締・帯揚を

ミセスの第一礼装である黒留袖や色留袖。裾に描かれた豪奢な模様を引き立て、着姿を引き締めるのが帯締です。通常、このときには金銀あるいは白地に金糸銀糸があしらわれた帯締が用いられます。白と金がリバーシブルになったものもあります。

素材は絹です。昔は丸ぐけといって縫い合わせた絹に真綿をいれ、円筒状にしたものが使われていましたが、礼装では平組か冠(ゆるぎ)組です。平組はその名の通り、平らに組まれています。おしゃれ着物よりも若干幅広の場合もあります。冠組は朝廷で男性が被る冠を結ぶ紐に使われた格式ある組み方です。

帯締に合わせて帯揚も白です。綸子もありますし、縮緬もあります。白無地も潔いのですが、金糸や銀糸で刺繡をほどこしたものや織り込んであるものも華やかな気分がでます。

準礼装では帯締は白が薄い色を合わせますが、訪問着などをパーティで着る場合は帯締に濃い色を選び、アクセントとしても趣があります。華やいだ雰囲気を出すためにパールや宝石をあしらった帯留を加えてもいいでしょう。ただ、この場合も帯揚は着物となじむ色合いにした方が上品にまとまります。綸子の刺繡入りや絞りなどを用いることが多いようです。

ちなみに、着物が日常着だった時代は冠婚葬祭も着物。当時の上流社会の社交着物に合わせたであろうアンティークの帯留の中には、海外の超一流ジュエラー顔負けの目を見張るような細工の帯留があります。

 なお、茶席では茶器に傷つけるリスクがあること、侘び寂びの境地とは異なることから帯留は使用しないのが普通です。

カジュアル着物はなんでもあり!

 自分が楽しむカジュアル着物に細かな決まり事はありません。そこで選ぶ帯締、帯揚にルールはありません。色や柄は「なんでもあり」です。

帯締は反対色などを選び、色を効かせてビシッと締めるのもいいですし、帯になじませて上品にするのもいいでしょう。

また、帯留も陶製や木、漆、錫、スワロフスキー、流行のレジンなど、趣味と季節、行く場所や会う人に合わせて選びたいものです。ブローチを帯留にできる金属製のパーツもあるので、手持ちのブローチを帯留にすることもできます。クリスマスツリーのブローチを帯留にしてクリスマスパーティに出席するなども楽しいおしゃれです。

帯留を使用するときは帯の模様がない無地場にすると引き立ちます。とくにポイント柄の場合は柄を正面ではなく、左右どちらかにずらして着付けると柄と帯留が喧嘩をしません。

他方、帯揚は見える面積が少ないものです。ただ、着物と帯をつなぐために重要な役割をしています。ちらりと見える小紋柄や飛び柄はアクセントになりますし、判じ絵や絞りで具象的なものを表現したものなどは着ている自分だけの密かな楽しみです。

 そして、着付けるときに帯揚げをどのように出すかで雰囲気が変わります。中心は結ぶのか、入り組(いりく)にするのか。縮緬でふんわり結ぶのか綸子ですっきりさせるのかなど好みが分かれるところでしょう。

 「なんでもいいといわれると、かえって困る。何を選んでいいのか分からない。しかもセンスが問われるので怖い」という方も多いでしょう。その場合は帯か着物の1色を持ってくると着姿全体の統一感があります。ベースとなる色をとればなじませた優しい感じ。柄の一部で刺し色のように使われている1色をとればアクセントになります。

 着装が終わってから、どうしても納得できない、コーデに不満……となった場合にどうするか。まず帯揚の出す分量を調節します。ベーシックな帯揚は身長にもよりますが、帯上2~3センチ出ています。これは年を経るごとに帯揚を出す面積が減り、フォーマル度が上がるごとに帯揚を出す面積が増えるときれいに見えます。が、少々、着方に幅があるので、脇をぐっと入れ込む(脇がすっきり見えるという利点も)、気持ち出すなどを行います。

 その上で帯締を取り換えます。最初にしていた帯締をそのままにしておいて、変える帯締をし、それから最初にしていた帯締を取れば簡単に変えられるのです。

夏の帯揚は絽、紗、紋紗 『 季節先取りで旬を楽しむ 』

単衣、薄物になると帯揚も涼やかな素材に変わります。主な素材は絽や紗、紋紗です。いずれも透け感があり、見た目にも涼しげです。無地のほか、器物や吉祥文、小紋柄など、合わせ用のものと変わらない柄がありますが、この時期ならではのものとしてなでしこや薄(すすき)などの秋草模様があります。通常、絽や紗を使用し始めるのは5月終わり。その時期に秋草?と思いますが、秋草を見て、秋風が立つことを思い、少しでも涼しい気持ちになるというものです。雪輪も同じ理由で描かれています。

帯締もレース様の組み方があります。平組に比較して透け感があり、夏のものという感じがします。三部紐と冠組は季節を問わず使えますが、色味は帯との調和を考慮しながら、やはり清涼感のあるものを選択します。三部紐は帯締が必要になりますが、透明感のあるガラスやビーズなどの素材やヨットやスイカなど、夏の風物の帯留を選ぶとこなれた感じになります。

「小物先取り」といわれ更衣よりも早くに小物を変えるのがおしゃれとされています。帯締や帯揚で季節の柄や色を先取りするのは着物ならではの楽しみです。薄い色合いや柄に「あ、夏が来た」と見る人に思わせるのも醍醐味です。逆に季節を間違える、過ぎた季節のものを身に付けるとセンスがないと思われてしまいますので、ご注意を。

ただし、茶席は季節に厳密な場合もありますので、社中の方に相談するのがいいでしょう。

なお、結婚式に黒留を着用するのであれば、盛夏でも袷が主流ですので(薄物の黒留を持っている人はほとんどいません)、その場合はフォーマル用の帯揚、帯締を用います。

20.06.29
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