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#4 お宮参りで使う「祝着」「初着」選び

【特集:お宮参り】#4

お宮参りでは、赤ちゃんに祝着や初着(産着)と呼ばれる衣装を着せるのが一般的ですが、実際、どのようなものを選べばいいのでしょうか? 東京・東日本橋にある、創業66年の特撰呉服卸「丸中」の中野早人さんにうかがいました。

◆初着の“柄”には意味がある

「男の子の初着には、たくましく育って欲しいという思いが込められた、力強い図柄があしらわれています。鷹(たか)や兜(かぶと)といった柄をメインに、松や鯉、軍配や宝船などの縁起のいい柄や文様が配置されています」(中野さん)

「鷹」が描かれるのは、遠くまで見渡せるするどい千里眼を持ち、幸運をつかんで離さない爪を持っているからだと言われています。

「兜」や「武具」は、勇ましさの象徴。雄々しく、力強く成長することを願う絵柄です。先端が広がる“末広がり”の「扇」も縁起の良い吉祥文様。

こちらは複数の縁起ものをモチーフにした絵柄です。さまざまな昔話などにも登場する「打ち出の小槌」は富貴の象徴。また各所に描かれる巻物は、知恵や知識を象徴すると言われています。

一方、女の子の場合は、赤やピンクといった明るくきらびやかな配色の着物が多いといいます。

「七色の配色は、昔から魔除けや厄除けになるといわれています。また、帯や帯締めなどの“長い物”が描かれているのは、昔から長いものには悪いものが近づかない、といわれているためです。細かい柄については、昔から受け継がれてきた古典柄が多いですね」(中野さん)

代表的な文様である、“束ね熨斗(たばねのし)”。ご祝儀の進物や引き出物に添えたのが始まりとされる“熨斗(のし)”を、数本束ねたもので、男女問わず使われますが、女の子の着物の場合には、きらびやかな配色が施されています。

吉祥文様の中でも、打ち出の小槌や宝珠(ほうじゅ)、隠れ笠、宝鑰(ほうやく)、金嚢(きんのう)、七宝といった多彩な文様と組み合わせて使われるものを“宝尽くし”と言います。

そのほか、女の子の着物には、蝶や鈴などの模様も多くあしらわれています。

「形を変えながら美しく成長し、ふわふわと舞い上がる蝶や、魔除けになると同時に、味方や神様を呼び寄せる鈴なども人気の柄です。また、桜や松竹梅など草花模様がデザインされたものもあります。桜は日本の国花ですし、松竹梅と同様、縁起の良い花。ですから四季を通じて、着ていただけます」(中野さん)

初着には、さまざまな文様や柄がデザインされていますが、「何月生まれだからこの柄」、「何年生まれだからこの柄」といった決まりはないのだとか。ただし、一つ一つの柄や文様には、それぞれ意味があります。そうした、柄や文様に込められた願いを知った上で、赤ちゃんの初着を選ぶと楽しいですね。

◆初着に「家紋」を入れる

「初着はフォーマルなもの。特に男の子の場合、実家を継ぐという意味から、初着には父系の家紋を入れるのが正式です。家紋は名字と同じ役割を果たし、昔は、着物に付いている家紋を見れば、どちらのご家庭の方なのかが分かるほどでした。一方、女の子の場合は、地域ごとの慣習などにもよりますが、お嫁に行くという想定なので、家紋は付けない場合が多いですね」(中野さん)

家紋を入れるかどうかは、地域によって異なります。女の子の初着にも家紋を入れる地域がありますし、男女ともに母系の家紋を入れる地域もあります。まずはご家族や親族の方に確認してみるのがいいでしょう。

ちなみに、家紋を入れる場合、初着の5カ所に入れます。両胸に2カ所、背中に1カ所、両袖の裏側に2カ所の“五つ紋”です。呉服屋さんなどで入れる場合は、上絵や刷込みといった手法で入れます。

家紋が分からない、という方もいらっしゃると思いますが、その場合は、仏壇や先祖代々のお墓に刻まれている家紋を、写真に撮っておくといいでしょう。あとは初着をつくる際、呉服屋さんで家紋カタログと写真を見比べることで、正しい家紋を指定できるはずです。

◆お宮参りの初着、下には何を着る?

「昔は“一ツ身(ひとつみ)”と呼ばれる着物を着せていました。しかし今では、出産後に退院する際、病院などで赤ちゃんに着せられるベビードレスの上から、祝い着としての着物を着せるのが主流となっています」(中野さん)

初着を着せ、頭巾などをかぶせると、赤ちゃんの顔だけが周囲に見えるようになります。そのため現在、初着の下にはベビードレスや普段着を着せる方も増えています。そうした初着の下に着せるものは、できれば白を基調とした色のものを選ぶようにしましょう。

また、一ツ身やベビードレスの下には、赤ちゃんが着慣れている肌着を着せるように。ただし、真夏にベビードレスは暑いので、そうした場合には肌着だけでもよいでしょう。一方、冬は、寒い中でご祈祷を受ける場合も考えられます。そのため赤ちゃんには、厚手の肌着や普段着を用意してあげるとよいでしょう。

◆「一ツ身」や「四ツ身」とは?

一ツ身や三ツ身、四ツ身というのは、元々、着物1枚を仕立てるのに必要な“一反”の反物を、どれくらい必要とするか、を表す着物用語です。

「例えば、一ツ身の着物に“肩上げ”や“腰上げ”といったサイズ変更を施せば、七五三のときの晴れ着としても使えるようになります。肩上げは裄丈、腰上げは身丈を変えるのですが、そうした変更は呉服屋さんなどで気軽に受け付けてくれます」(中野さん)

◆初着・祝着の保管方法は?

「着物は湿気に弱いもの。除湿剤を入れた桐ダンスに入れていただくのが一番なのですが、もしも一般的なタンスやプラスチックの衣装ケースなどに入れて保管する場合は、必ず乾燥剤を入れてください。また、定期的に取り出して、風に当てていただくといいでしょう」(中野さん)

最近の着物は、良質な生地を使っているものが多く、少し高価に感じられるかもしれませんが、大切に保管すれば、兄弟・姉妹はもちろん、代々使うことができます。保管場所についても、購入前にチェックしておくといいでしょう。

冒頭でも触れましたが、お宮参りはお子さんにとって、初の晴れやかなイベントです。結婚式などと同じように、お子さんの成長を感じられる大切な儀式。家族や親戚といっしょに、きちんと祝ってあげたいですね。

写真協力:千總(http://www.chiso.co.jp/

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19.06.07
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