【現地レポ】『沖縄の工芸展』は贅沢だった!宮古上布・花織・芭蕉布が一堂に会する奇跡とは
雅ONLINEはまだまだ始まったばかり。・・・とはいえ、結城紬の現場も見てきたし、着物に関する情報が少しずつ集まってきた。
そんな折に耳に入ったのは、『沖縄の工芸展』という名のプレミアムイベントが銀座で行われる情報だ。そこでは、沖縄にゆかりのある着物をたくさん見ることができるらしい。
沖縄といえば青い海に青い空、夏のイメージが先行するがなぜ着物が有名なのだろうか。日本の南端に位置する暑い気候のはずだが、名のある織物がいくつもある。冷静に考えてみても不思議なことだ。
そんな沖縄の着物がどうしても気になってしまったので、9月6日〜8日に銀座で開催された『沖縄の工芸』に足を運ぶことにした。
『沖縄の工芸展』について
『沖縄の工芸展』は今回で26回を迎えるイベントで、銀座で開催されるのは6回目だ。
有識者に話を伺うと、着物の作り手が少なくなっているという現状に加え、手作りのものである特性上とても供給量が少ないそうだ。
全国的に同じような現象は起こっているが、「沖縄の-」と言ったらさらに希少なものだ。
本来であれば日本中の呉服屋に散らばってしまうところを、『沖縄の工芸展』はそれらを一箇所に集めて展示、及び販売している。私たちがこれだけ集中して沖縄の着物を見れる機会は奇跡的。そう言っても過言ではないはずだ。
さらに、これらは全部新作だと言う。なおさら貴重な機会であることは間違いない。勇み足で『沖縄の工芸展』の会場へと向かった。
『沖縄の工芸展』会場の様子
ここからは会場の様子を写真メインにご紹介したい。今回は特別に、一般のお客様が入る前の会場を回ることができた。
ぐるっと歩いて回るだけだと30秒もかからない大きさの会場だが、端から端まで所狭しと着物が並んでいる。どの色合いも美しいが、特に色と色が複雑に折り重なった織物が際立って美しい。
本来であれば、これらの美しい着物にひとつひとつ触れていきたいが、文面の都合もある。その中でも宮古上布・花織・芭蕉布の3つについて簡単に紹介したい。
トンボの羽のような宮古上布
上布とは、平織りされた上質な麻布のことだ。「日本三大-」はよくある日本のベスト3を表現する決まり文句だが、ご多分に漏れず日本三大上布が存在する。
その3つとは「宮古上布」「越後上布」「近江上布」であり、宮古上布は1978年に国の重要無形文化財に登録された最高級の麻織物である。
向こう側が透けて見えるトンボの羽の様な織物も、すべて糸造りから現地で手作業で行なっている。苧麻という麻科の植物を育て、繊維をとり、一本ずつ繋げて糸を作っていくのだ。
糸ができたら染めて色をつけ、機でコツコツと織っていく。一つ一つの工程にきめ細やかで丁寧な作業が求められる、本当に気の遠くなる様な工程だ。
宮古上布はその様な特に手の込んだ手作業の織物ゆえ、反物を見る以上に着物として羽織ると、特別な高級感と麻織物特有の涼しげな清涼感が体を駆け抜けるそうだ。
さすが沖縄の地で育まれた織物というだけあり、夏の日差しの強い時にさらりとさり気なく着こなしてこそ、この着物の持つ特別な風情を感じる事ができるのかもしれない。
琉球独自の花柄が目を楽しませる花織
つづいては花織だ。花織は縞模様の中に小さな花柄をあしらった織物の総称で、今回は南風原(はえばる)花織や、読谷山(ゆんたん)花織といった有名な花織が展示されていた。
花柄と一口に言っても実に様々なものがあり、当然ながらいくつもの織り方がある。花柄は一定単位の図柄は決まっていて、それぞれに意味がある。
花柄は琉球独自のものが多く、柄を理解することは歴史や風土を知ることにも繋がる。
現代の洋服でもそうだが、小さな柄が無数に織りなす模様は見れば見るほど新たな解釈が生まれるし、何より目を楽しませてくれる。(もちろん作り手の膨大な手間と時間があって完成することは忘れてはならない。)
13世紀頃から存在する稀少な芭蕉布
最後は芭蕉布だ。芭蕉には花芭蕉・実芭蕉・糸芭蕉の3種類があるという。古くから沖縄の人々に親しまれてきた植物で、実芭蕉は皆さんお馴染みのバナナの別称である。
芭蕉布はこのうち糸芭蕉から作られる織物で、古くは13世紀頃から存在し、庶民の生活に欠くことのできない衣服だった。
そのため沖縄の暑い気候に適した涼やかな手触りと着心地で、着ればいっそう夏を感じるとすら言われている。展示されている喜如嘉の芭蕉布は、1974年に国の無形重要文化財に指定されたことからもわかる通り、年々その稀少性が高まっている。
『沖縄の工芸展』で芭蕉布を目にすることはまさに奇跡だと言っても、もはや過言ではない時代が来るかもしれない。
『沖縄の工芸展』番外編
最後に番外編ということで、『沖縄の工芸展』のメイン会場以外も少しご紹介したい。
小さなブースには比較的手が届きやすい織物や小物なども並んでいた。来れなかった友人への手土産に良いかもしれない。
次回の『沖縄の工芸展』は第27回を数える。年々どのような新作が一堂に会するのか目が離せない。ここまで読んだあなたなら、このイベントがとんでもなく贅沢なものだと言っても、きっと頷いてくださるのではないだろうか。