着物

〈きものお出かけ #1〉東京都・文京区:近代日本の足跡をたどる街歩き

せっかくお洒落な着物を持っていても、着ていく場所がなければタンスの肥やしになってしまいます。それはもったいない!ということで、着物に合うお出かけスポットをご紹介していきます。

今回取り上げるのは、東京都文京区。江戸時代から近代の日本の歴史が積み重なった地です。折角なので、その雰囲気を感じていただくために、当時の絵や写真も合わせてご紹介します。

記事の最後に、今回ご紹介したスポットと、紹介しきれなかった他のおすすめスポットをまとめたマップを載せています。よろしければご活用ください。

①六義園

小石川後楽園と並ぶ「江戸二大庭園」です。元禄8年(1695年)、五代将軍徳川綱吉の側近であった柳沢吉保が、綱吉から賜った地に造成しました。

庭園の名称は、中国の古い漢詩の分類法「詩の六義」を、紀貫之が和歌に転用した「六体」に由来します。大泉水を樹林が取り囲み、和歌に詠まれた紀州(和歌山)の名勝が「八十八境」として映し出されています。

東京市役所「出汐湊より仙禽橋を望む」(出典:東京都立図書館 TOKYOアーカイブ[https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/detail?tilcod=0000000007-00243810])
『庭園』「六義園」(出典:東京都立図書館 TOKYOアーカイブ[https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/detail?tilcod=0000000015-00214989])

施設情報
・所在地:〒113-0021 東京都文京区本駒込6-16-3 (正門・サービスセンター)
・入園料:一般 300円 ほか

関連リンク:
https://www.tokyo-park.or.jp/park/rikugien/index.html
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/p003839.html
https://b-kanko.jp/spot/262

②白山神社

天暦二年(948年)以来の長い歴史を持ちます。特に第五代将軍・徳川綱吉公に篤く信仰されるなど、将軍家との関係も深い神社です。縁結びの神社としても知られ、そこから転じて「商売繁盛」「商談成立」の御利益もあるとか。梅雨頃には約3000株のあじさいが咲き誇り、「あじさいまつり」で賑わいます。

松濤軒斎藤長秋 著 ほか『江戸名所図会 7巻』[13],須原屋茂兵衛[ほか],天保5-7 [1834-1836]. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション[https://dl.ndl.go.jp/pid/2563392])

施設情報
・所在地:〒112-0001 東京都文京区白山5-31-26

関連リンク:
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/p003824.html
http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/bunkyo/5901
https://b-kanko.jp/spot/256

③小石川植物園

正式名称を「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」といい、植物学の研究教育を目的とした東京大学の附属施設です。貞享元年(1684年)に徳川幕府が設けた「小石川御薬園」を起源とし、明治10年に東京大学(帝国大学)が設立された後は附属植物園となり一般にも公開されてきました。「東京医学校」の歴史的な校舎も移設されて残っています。もともとは研究施設ですから、普段見られないような珍しい植物も鑑賞できます。

東京医学校の校舎。広い園の最奥にあるのでご注意。
北アメリカ原産のツキヌキニンドウ(Lonicera sempervirens)。日本へは明治時代中頃に移入された。
中国原産のコノテガシワ(Platycladus orientalis)。

施設情報
・入園料:大人500円。
・開園時間:9:00~16:30(※入園は16:00まで)
・所在地:〒112-0001 東京都文京区白山3-7 
※入園口は一つです。「小石川植物園 正門受付発売所」を検索、そこから入場を。

関連リンク
https://koishikawa-bg.jp/

④根津神社

現在の社殿は、宝永3年(1706年)、五代将軍・徳川綱吉によって奉建されました。貫禄をたたえる門や拝殿はもちろんのこと、乙女稲荷に続く千本鳥居も鮮やか。4月には3000株のつつじが咲き誇る「つつじまつり」も開かれます。森鴎外や夏目漱石が近くに住んでいたことから、文豪ゆかりの地ともなっています。

千本鳥居。朱色の鳥居と緑葉のコントラストも美しい。
二代目歌川広重『江戸名勝図会 根津』. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/1309932/1/1])
松濤軒斎藤長秋 ほか『江戸名所図会 7巻』[15],須原屋茂兵衛[ほか],天保5-7 [1834-1836]. (国立国会図書館デジタルコレクション[https://dl.ndl.go.jp/pid/2563394/1]をもとに作成。)
※江戸時代は神仏習合の下で「根津権現」と呼ばれていた。
「根津権現」時代の面影を残す手水舎。神社だが、仏教のシンボルである「卍」が彫られている。

施設情報
・所在地:〒113-0031 東京都文京区根津1-28-9

関連リンク
・https://nedujinja.or.jp/

⑤東京大学

東京大学は、明治10年(1877年)に創設されました。安田講堂をはじめとした明治・大正期から残る建物が多く見られます。

ところで、いわゆる「赤門」は江戸時代には加賀藩・前田家の屋敷の門で、将軍家の姫が輿入れされる際に建てられたものです。大学よりもずっと長い歴史を持っています。

夏目漱石の作品にちなんだ名で呼ばれる「三四郎池」は、正式名称を「育徳園心字池」といい、キャンパスの中央に位置します。秋には、正門から安田講堂へ続く銀杏並木も見どころです。

『東京風景』,小川一真出版部,明44. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/764167])
今は現存しない建物もかなりあるが、大正期などに建てられた歴史ある建物は多く現存している。
歌川広重『(狂句合)本郷』. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/1304971])
前田家の屋敷を描いた浮世絵。
小川一真 編『東京帝国大学』明37,小川写真製版所,明37. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/813162
静謐をたたえる三四郎池。

施設情報
・所在地:〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1

※大学は、第一に教育・研究のための施設です。教育・研究環境を乱すことがないよう、お静かに見学ください。
※15人以上の見学は事前申請が必要です。詳しくは、下記「本郷キャンパスの見学について」をご確認ください。

関連リンク
・東京大学「歴史的建造物の紹介」:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/b07_04.html
・東京大学「本郷キャンパスの見学について」:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/public02_05.html

⑥湯島天満宮

学問の神様、菅原道真公を祀る「天満宮」の一社です。458年に創建され、1355年に菅原道真公を勧請し、以来多くの学者や文人に崇敬されてきました。現在も、学業成就・合格祈願に多くの人が訪れます。

2~3月には「文京梅まつり」、11月には「文京菊まつり」が催されます。

歌川広重『江都名所』湯しま天満宮,喜鶴堂. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/1303566])
歌川広重『江都名所』湯しま天神社,佐野喜. (出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/1303563])
※奥に見えるのは上野の不忍池。現在はビルやマンションが立ち並び、湯島天神から不忍池は見えなくなっている。少し寂しい気もするが、我々の暮らしが豊かになったことの証左でもある。こうした時の流れに、不意に「もののあはれ」を感じるのも悪くないのではないだろうか。

施設情報
・所在地:〒113-0034 東京都文京区湯島3-30-1

関連リンク
http://www.yushimatenjin.or.jp/
http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/bunkyo/yushimatenmangu

⑦小石川後楽園

江戸時代初期に水戸徳川家の初代藩主・徳川頼房、2代藩主・光圀(水戸黄門)によって造られました。江戸の大名庭園としては現存する最古の庭園で、特別史跡及び特別名勝として国の文化財に指定されています。

中央の泉水を中心に「海」「山」「川」「田園」など日本の様々な光景をイメージした区画が連環して配されています。ゆったりと園内を歩きながら、それぞれの場を表象するような四季折々の草花を楽しむこともできます。

小泉幾太郎『日本之勝観』,日本地史編纂所,明36.(出典:国立国会図書館デジタルコレクション [https://dl.ndl.go.jp/pid/762806])
※120年の時を経て、同じ画角での撮影を試みた。手入れが行き届いており、ほとんど変わっていないところもある。
「田園」をイメージした花菖蒲園。
「田園」と蜻蛉。日本の原風景を感じる。

施設情報
・所在地:〒113-0034 東京都文京区湯島3-30-1

関連リンク
https://www.tokyo-park.or.jp/park/koishikawakorakuen/index.html
https://b-kanko.jp/spot/240
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/p003833.html

おわりに

文京区観光協会によるスポット紹介(https://b-kanko.jp/spot)も参考になります。

お出かけの際には、文京区コミュニティバス「Bーぐる」も便利です。
・公式サイト:https://www.city.bunkyo.lg.jp/b011/p001057/index.html
・ルートマップ・時刻表(PDF):https://www.city.bunkyo.lg.jp/documents/1088/syusei_bunkyob-grumap_2025_j_web_0415.pdf

また、文京区によるガイド付きツアーなどもあります。適宜ご活用ください。
https://b-kanko.jp/guide
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/rekishikan/p007761.html

マップ