全国きもの染織品マップ 【第1回 加賀友禅】
第1回 加賀友禅
日本では昔からさまざまな染織品が作られ、きものとして着られてきました。
このコーナーでは、風土に育まれた全国の染織品をご紹介していきます。
日本を代表する染め物である友禅染には、京友禅をはじめ、いくつかの産地があります。
今回は「加賀友禅」を取り上げて、その特徴や魅力についてご紹介します。
金沢で作られる優美な友禅染
多彩な模様を染める染色技法が「友禅染」。その中でも、石川県の金沢市で作られている染物が「加賀友禅」です。花鳥風月を中心とした自然を題材に、絵画的に描いた優美なデザインが特徴です。
加賀友禅の基調になっているのが「加賀五彩」。
藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色のことです。
現代の加賀友禅では、この加賀五彩に基づいて、時代の好みや作家の個性などを反映させて全体の配色を決めています。
加賀友禅の特徴のひとつが、金箔や刺繍をあまり施さず、染めだけで模様を表現するものが多いということ。
染めだけで表現された繊細な美しさが魅力といえます。
特有の表現「先ぼかし」「虫喰い」
加賀友禅の模様に見られる特有の表現があります。
模様の外を濃く、内側を薄く染めるのが「外ぼかし」です。
なかには「三色ぼかし」といって、木の葉の一部が枯れたり、紅葉している様子を3色のぼかしで表現する技もあります。
木の葉に墨色の点を描くのが「虫喰い」です。
これは木の葉が虫に食われた様子を表現したものといわれます。写実性を加えながら、模様にアクセントをつける方法としてよく用いられます。
作家性が強いデザイン
友禅染の技法は京都で作られる京友禅とほぼ同様です。
京友禅では制作は分業制をとっていますが、それに対して加賀友禅では多くの場合、作者が図案、下絵、彩色を一貫して手掛けます。そのため個性を表現しやすく、作家性の強い点も特徴といえます。花鳥風月にこだわらない、抽象柄などのモダンな作品もよく見られます。
加賀友禅作家は主に加賀染振興協会に属し、名簿に落款を登録しています。
多様な加賀友禅を楽しむ
加賀友禅には、手描き友禅と型友禅があります。
訪問着をよく見かけますが、付けさげ、小紋、染め帯も作られています。
加賀友禅は多彩な染物であり、華やかな場所でよく着られています。
色や模様にもよりますが、訪問着や付けさげなら、祝宴やパーティなどにおすすめです。
加賀小紋や染め帯は、気軽なお集りや、軽い外出、お稽古などで自由に楽しみましょう。
撮影・文/笹川茂実