【カレンブロッソ】販売数日本一「カフェ草履」は度重なる失敗から産まれた――菱屋 大坂本社への訪問
雅onlineとして今回は大阪谷町にある草履メーカー菱屋へ訪問させていただいた。

大阪の人形問屋が立ち並ぶ松屋町筋を少し入った所に、昔ながらの風情のある建物が立ち並ぶ街並みが見えてくる。
この辺りは大阪大空襲を奇跡的に免れた長屋等の建物が立ち並び、近くには、他生國魂神社や四天王寺等主要寺院以外にも数多くの寺町が立ち並んでいる。
趣を肌で感じながら歩いていると、木造建築に緑色の銅の屋根、風情のある建物に辿りつく。
大正15年創業、大阪の老舗草履メーカー『菱屋』本社だ。本社家屋は創業時から変わらず営業しているとのこと。とても風情を感じる作りになっている。


打率3割を目指す
中を覗くと、メガネをかけた老翁が草履の台に数種類の綺麗な織りの鼻緒を合わせ、色合いを調整している最中だった。
この方が菱屋の二代目にして「カレンブロッソ」の創業者、廣田嘉秀会長である。

非常に人懐っこい笑顔が印象的な気さくな方で、会長はカレンブロッソを発明したものの、現在カレンブロッソは息子さんに譲り、今でも昔ながらの高級な草履を作り続けている。

廣田会長から20年前に試作品で作ったカレンブロッソの初期版を見せてもらった。
試作版で歩きやすく疲れない草履を目指して作ったものの全く売れなかったという。コルクを重ね合わせてクッション性を高めた作りになっているが、コルクもむき出しで、機能性が全面に押し出されたデザインだ。

この履物から何度も修正を加えながら、洋のデザインを加えて出来上がったのが現在のカレンブロッソになる。

廣田氏は常にものを作り、その中からヒットが生まれる。「打率は3割もあればいい方です」と割り切った言い方をするのには驚かされた。この会長のDNAが根付く菱屋からは、これからも面白いものが生まれてくるだろう。
カレンブロッソ『カフェ草履』の紹介〜カレンブロッソ谷町本店にて〜
廣田氏が作業する建物の横に、段ボールが山積みになった大きな倉庫があり、作業服の人々が忙しそうに頻繁に出入りしている。大きさは菱屋本社の数倍になるだろう。
この建物こそが今着物ファンの中で人気であるカレンブロッソの倉庫である。その倉庫の横にカレンブロッソ谷町本店がある。
母体の菱屋は、昔ながらの華やかで高級感のある草履を作る部隊と、普段使いに向いたカフェ草履等のカレンブロッソ部隊を分けて展開している。今ではカレンブロッソは年間1万足以上の注文が入ってくるという。
カレンブロッソは従来の草履の素材に加えて、スニーカーなどに使われる『EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマーという樹脂)』の台を採用することで着地時のクッション性を高め、底には『合成ゴム』を使い、グリップ力を強めて地面を蹴り出しやすくしている。この歩きやすさ・疲れにくさが、きものファンの中で不動の地位を築くことに繋がったのだ。

最後に仕上がったばかりのカレンブロッソを撮影させていただいた。



