カラーコーディネート②〈平安の重ね色目・春-1〉
はじめに
きものライフをもっと豊かに楽しんでいただけるよう、カラーコーディネートの参考にもなる「色合わせ」をご紹介していきます。
前回に引き続き、平安時代・有職の「重ね色目」からのご紹介です。当時の風流人たちは、身の回りの植物や自然物をイメージした色合わせを考案してコーディネートし、楽しみました。
本来は装束(特にカジュアルなものである狩衣など)の表と裏地の色の合わせですので、その通りに使うならきものと裏地(八掛など)、あるいは襦袢などの組み合わせになるでしょうか。ただ、ここでは単に「色の組み合わせ」として紹介いたしますので、カラーコーディネート全般の参考程度にご覧いただければと思います。
流行や自分の好みに合わせて適宜アレンジすると使いやすいのではないかと思います。当時の人々も自分なりの感性で色合わせを生み出していたようですから、好きなものをイメージして創作してみても楽しそうです。オシャレにおけるコーディネートは「自己表現」の一種ですから、何かをイメージして服を着るというのは「創作」といえるのではないでしょうか。
春の色目
まだまだ寒いですが、2026年の立春は2月4日(水)、旧正月は2月17日(火)です。とはいえ暦も変わり、また気候も変わりつつあります。「春」を暦で定義するか、気温や気候で定義するか、はTPOによって使い分けていただくのがよいのではないでしょうか。
梅
白い梅の花と、萼(がく)の色を表したものだといいます。花びらの根もと部分を覆う「萼」はかなり濃い色をしていて、そのコントラストが表現されているのでしょう。

※記述には「白」としか書かれていませんでしたが、白の絹布を想定して作成しました。


つぼみ梅
紅梅の蕾、萼や枝を表現したものといいます。
※これら以外にも、多種多様な梅をイメージした色合わせがあります。


柳
冬の間は落葉していた柳に新しく萌える新緑の情景でしょう。柳は落葉樹であり、冬の間は葉を落とします。それが再び葉を萌えさせる姿は、人々に春の到来を告げたことでしょう。


黄柳

早蕨(さわらび)
早春から芽を出し始めるワラビを指す言葉です。厳しい寒さの中で春の訪れを知らせるものとして、古くから好まれました。


菫(すみれ)
スミレ科の多年草で、春に濃い紫色の花を咲かせます。花びらの繊細なグラデーションを表現しているのでしょう。


壺菫(つぼすみれ)
ツボスミレのことでしょうか。タチツボスミレのことも俗に「ツボスミレ」と呼ぶとのことで、当時の言葉が何を指したかは正確にはわかりません。(ご存じの方がいたらご教授ください……)
「淡青」がこれくらいの黄緑色を指していたなら、葉の色でしょうか。



若草
春の文字通りに青々とした若草をイメージしているのでしょう。こうした「一つのものの中のグラデーション」の表現が巧みだなと感じます。


萌黄(もえぎ)
春に萌え出でる新芽を表現した合わせ。こちらの「黄+萌黄(黄緑色)」以外にも、「萌黄+萌黄」のようなバリエーションもあるようです。


ということで、春の重ね色目のご紹介でした。
コーディネートしてみると…
つぼみ梅+梅
「ワインレッド」といわれるような「濃蘇芳」が強い印象を与えます。

若草+早蕨
まだ冷たい湿った空気に若草や早蕨が萌え出で、山へ静かに春が訪れます。
……小倉抹茶に見えてしまいました。美味しそうです。

菫+萌黄 あるいは壺菫
少し暖かさを増し、スミレの花が開く早春。百花斉放を予感させます。

黄柳+萌黄+若草
青々とした柳の新緑、木々の萌黄や若草たちの醸すボタニカルな温かみ。

====================
主要参考文献
・城一夫『時代別 日本の配色事典』パイ インターナショナル, 2020年.
・八條忠基『有職の色彩図鑑 : 由来からまなぶ日本の伝統色』 淡交社, 2020年.
・吉岡幸雄『日本の色辞典』紫紅社, 2000年.
・綺陽装束研究所 [http://www.kariginu.jp]
・伝統色のいろは [https://irocore.com]
・日本服飾史「色彩と文様」[https://costume.iz2.or.jp/color]
・政府広報オンライン「自然の移ろいを表す『かさねの色目』」[https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202010/202010_06_jp.html]
