茶会での『利休七則』とは?
客を招き、抹茶をたててもてなす茶会。茶道に馴染みがなければルールばかりで堅苦しい席を思い浮かべがちですが、お茶の本質は相手や物を大切にし、心を尽くすことだといいます。
茶会には、ぜひ張り切って着物を着ていきたいもの。初めて茶会に出かける人には一つ紋付きの色無地がおすすめです。顔色の映えるきれいな地色のものを選びましょう。大寄せの茶会(大人数を招く茶会)で初心者が作法を厳しく注意されるということはありませんから、せっかくの機会を楽しみたいですよね。
茶会の心構えのヒントは千利休にあり
とはいえ、右も左もわからないまま出かけるのは不安ですし、見苦しい振る舞いは避けたいもの。安土桃山時代の茶人でわび茶を大成した千利休は、茶の湯の極意をこう説いたそうです。
1.茶は服のよきように
2.炭は湯の沸くように
3.夏は涼しく冬は暖かに
4.花は野にあるように
5.刻限は早めに
6.降らずとも雨の用意
7.相客に心せよ
7つの心得は『利休七則』と呼ばれ、ここにおもてなしの心構えが凝縮されています。たとえば「夏は涼しく冬は暖かに」、つまり季節感を取り入れること。お菓子やしつらいからは、亭主のそうした細やかな心配りを感じることができます。
一方で、利休七則の心構えは茶会を主催するもてなし側の亭主だけでなく、茶会に招かれた客にもあてはまります。
「刻限は早めに」、つまり時間と心にゆとりを持って早めに行動することは相手の時間を尊重することにもなります。焦ってばたばたと入室するなんてもってのほか。また、時間を気にすることは亭主に失礼なので、洋装であっても腕時計はしません。
「降らずとも雨の用意」はどんなときにも適切に対処できるよう、気持ちの面でも、実際の持ち物という意味でも準備を怠らないことを示しています。
大恥をかかないための茶会の持ち物
では、茶会にはどんな小物を携帯すればよいのでしょうか。
まず忘れてはならないのが懐紙と菓子切り(楊枝)。お茶の席では、抹茶が出される前に、季節や風情を演出したお菓子をそれぞれ懐紙に取っていただきます。つぎに、扇子。これはお茶室に入るときに使います。ほかにも、濃茶をいただいたり道具を拝見したりするときに必要な出袱紗(だしぶくさ)、これらの小物を入れるのに便利な数寄屋袋もあるといいでしょう。
足袋が汚れたときのための替え足袋と替え足袋入れ、茶会用バッグ、コートやバッグを包める風呂敷もあれば重宝します。大人数が集まるときは、鼻緒留めがあれば草履の取り違えがなく便利です。
そして最後に、「相客(あいきゃく)に心せよ」の意味を知っていれば、茶会の心構えはばっちりです。これは、正客(主賓)であっても末客(最後の客)であっても、茶会で一緒になった客は互いを尊重し合い、誠意を尽くしてその時間を楽しむべきことを指します。
道具を傷つけないようアクセサリーは身につけない、お菓子を取るときに美しい盛り付けを崩さないように気をつける、道具を譲り合って拝見する、などのマナーは相客への心配りの表れと言えるでしょう。
一度茶会に行ってみたいけれど招かれそうもないという人は、まずは美術館や寺社、庭園などで開かれる初心者歓迎の茶会を調べてみるのがおすすめです。
主な参考文献
・美しいキモノ238号別冊付録「抹茶&煎茶 初心者のためのお茶会手帖」
・デービッド・アトキンソン著「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」講談社+α新書 2014年
・裏千家今日庵 http://www.urasenke.or.jp/index2.php