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きもので行きたい美術館〈東京・2025年 秋②〉

着物を着るのがより楽しくなる、着物で行くとより楽しめる。着物好きにオススメな、今秋東京で開かれる展覧会をピックアップしてご紹介します。

今秋は「アール・デコ」の波がきているのでしょうか。「アール・デコ」は1910~30年代頃のパリを中心に流行した、幾何学的な反復、直線性、実用性、明快で鮮やかな色遣いなどを特徴とする芸術様式で、不規則で有機的な曲線の優美さを特徴とする「アール・ヌーヴォー」とは対照的とされます。

大正から昭和初期の日本にも影響を与えており、当時のきものにも「アール・デコ」調のものが多くみられます。ちなみに、最初にご紹介しているハイジュエリー メゾン「ヴァン クリーフ&アーペル」は、2023年に重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)の森口邦彦氏とコラボし、「プレシャスボックス」を製作したことでも話題になりました。
https://www.vancleefarpels.com/jp/ja/the-maison/articles/precious-boxes.html

東京都庭園美術館:永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ―― ハイジュエリーが語るアール・デコ

展覧会チラシ

ハイジュエリー メゾン、ヴァン クリーフ&アーペルは、1895 年にアルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚をきっかけに創立されました。本展は、1925 年に開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称 アール・デコ博覧会)」から100 周年を迎えることを記念した展覧会です。ヴァン クリーフ&アーペルはアール・デコ博覧会の宝飾部門において複数の作品を出品し、グランプリを受賞しました。

本展では、1910年代から1930年代にかけて制作されたアール・デコ期の作品を多数展示し、またメゾンに現在まで継承され続ける「サヴォアフェール(匠の技)」をご紹介します。歴史的価値が認められたヴァン クリーフ&アーペルの「パトリモニー コレクション」と個人蔵の作品から、ジュエリー、時計、工芸品が約250点と、そして約60点の資料が集まります。

絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年 プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年 プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
コルレット 1929年 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド エジプトのファイーザ王女旧蔵
ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
コルレット 1929年 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド エジプトのファイーザ王女旧蔵 ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

アール・デコは1910 年代から装飾芸術や建築の分野で起こっていた芸術潮流であり、その精華を受け継ぐ旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)が、本展の舞台となっています。

東京都庭園美術館本館大客室 (画像提供:東京都庭園美術館)
東京都庭園美術館本館大客室 (画像提供:東京都庭園美術館)

会期:
開催中~2026年1月18日(日)
時間:
10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで ※11月21日(金)、22日(土)、28日(金)、29日(土)、12月5日(金)、6日(土)は夜間開館のため20:00まで開館
会場:
東京都庭園美術館
〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
休館日:
毎週月曜日、年末年始(12/28~1/4)
※ただし月曜祝日の10/13、11/3、24、1/12(月・祝)は開館し、翌火曜日10/14、11/4、25、1/13が休館となります。
料金:
一般 1,400円 ほか
※本展は日時指定予約制です。ご来館前に展覧会公式サイトからチケットをご購入ください。
連絡先:
050-5541-8600 (ハローダイヤル)
公式サイト:
https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/

静嘉堂文庫美術館:[2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念] 修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝

静嘉堂文庫美術館は、三菱第2代社長である岩﨑彌之助が1892年に創設し、その子である第4代社長・小彌太によって拡充されました。父子2代によるコレクションは、国宝7件、重要文化財84件を含む、およそ20万冊の古典籍と、約6,500件の東洋古美術品を収蔵しており、日本の私立美術館ではトップクラスの質と量を誇ります。

大阪・関西万博にちなみ、20世紀初頭の博覧会に出品した岩﨑家(静嘉堂)所蔵の琳派や肉筆浮世絵、近代絵画などを皮切りに、国宝3件、重要文化財17件、重要美術品10件、そして未来の国宝?!菊池容斎の破格の巨大絵画が丸の内に登場します。近年修理を終えて美しく蘇った室町時代の屛風や中国宋・元の掛軸などの、水墨画ならではの筆墨の美や、見事な自然描写を、日中の作品を比較しながらご堪能ください。詩書画が一体となった東洋絵画のメッセージを一歩踏み込んで味わう機会となれば幸いです。

国宝「曜変天目(稲葉天目)」※通期展示
国宝「曜変天目(稲葉天目)」※通期展示
重要文化財  式部輝忠「四季山水図屛風」※後期展示
重要文化財 式部輝忠「四季山水図屛風」※後期展示

会期:
開催中~2025年12月21日(日)
 [前期]開催中~11月9日(日)
 [後期]11月11日(火)~12月21日(日)
開館時間:
10:00-17:00 ※入館は閉館の30分前まで。
※夜間開館あり。詳細は展覧会ページをご確認ください。
休館日:
月曜日(祝休日は開館し翌平日休館)、展示替期間(11/10)
料金:
一般 1,500円 など
会場:
静嘉堂文庫美術館 @丸の内
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
連絡先:
050-5541-8600 (ハローダイヤル)
公式サイト:
https://www.seikado.or.jp

三菱一号館美術館:アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に

1920年代を中心に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」。生活デザイン全般におよんだその様式は、「モード」すなわち流行の服飾にも現れました。ポワレやランバン、シャネルなどパリ屈指のメゾンが生み出すドレスには、アール・デコ特有の幾何学的で直線的なデザインや細やかな装飾が散りばめられています。それは古い慣習から解放され、活動的で自由な女性たちが好む新しく現代的なスタイルでした。

2025年は、パリで開催され、「モード」が中心的な主題のひとつであった装飾芸術の博覧会、通称アール・デコ博覧会から100年目にあたります。この記念の年に、世界的な服飾コレクションを誇る京都服飾文化研究財団(KCI)が収集してきたアール・デコ期の服飾作品と資料類約200点に、国内外の美術館・博物館や個人所蔵の絵画、版画、工芸品などを加え合計約310点により、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」を紐解きます。

会期:
開催中~2026年1月25日(日)
開館時間:
10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
※1/2を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20:00まで
休館日:
祝日・振替休日を除く月曜日、および12/31と1/1
※ただし、トークフリーデーの10/27、11/24と12/29、会期最終週の1/19は開館
会場:
三菱一号館美術館
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
観覧料:
一般 2,300円 など
公式サイト:
https://mimt.jp/ex/artdeco2025

国立新美術館:第118回 日本美術展覧会(日展)

日展は、明治40年に始まった「文部省美術展覧会」の流れを汲み、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の五つの部門からなる総合美術展で、また世界でも類を見ない規模の公募展です。全国各地から、10代の学生、社会人や100歳の方など、幅広い年齢の方が応募し、その中から厳しい審査を経て選ばれた作品ならびに日展会員、準会員、前年度特選受賞者の作品が陳列されます。会場に溢れる約3,000点の作品を通し、日本の美の現在(いま)を感じてください。

会場風景(日本画) ※第11回日展
会場風景(書) ※第11回日展

会期:
2025年10月31日(金)~11月23日(日・祝)
開館時間:
10:00~18:00 ※入場は17:30まで
休館日:
毎週火曜日
入場料:
一般当日券 1,400円 など
会場:
国立新美術館
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
連絡先:
03-3823-5701 (公益社団法人 日展事務局)
公式サイト:
https://nitten.or.jp
(会場 国立新美術館 https://www.nact.jp)

根津美術館:在原業平生誕1200年記念 特別展 伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた

平安時代前期に活躍した在原業平(825〜880)は、天皇の孫で、和歌に優れた貴公子です。『古今和歌集』などに収められる業平の和歌からは、恋多き生き方も浮かび上がってきます。そうした業平の和歌を中心とする短編物語集が『伊勢物語』です。『古今和歌集』が成立する延喜5年(905)より少し前から10世紀後半にかけて徐々に章段を増し、やがて125段からなる形が定着しました。 続く11世紀初頭に書かれた『源氏物語』の「絵合」巻には、絵の優劣を競う遊びのなかで伊勢物語絵巻が登場し、物語がすでに絵に描かれていたことをうかがわせます。以降『伊勢物語』は『源氏物語』と並び、日本の文化・芸術のあらゆる分野に多大な影響を与えることになります。

本展は、2025年、つまり業平の生誕1200年を記念して『伊勢物語』が生み出した書、絵画、工芸を一堂に集める展覧会です。『伊勢物語』の核心をなす和歌に焦点をあわせ、それを味わいながら、また『伊勢物語』の造形化における和歌の働きに注目しながら、ご覧いただきます。

在原業平像 室町時代 16世紀 根津美術館蔵
在原業平像 室町時代 16世紀 根津美術館蔵
重要文化財 伊勢物語絵巻(部分) 鎌倉時代 13~14世紀 和泉市久保惣記念美術館蔵
※前期展示[11/1(土)~11/16(日)]のみ
重要文化財 伊勢物語絵巻(部分) 鎌倉時代 13~14世紀 和泉市久保惣記念美術館蔵 ※前期展示[11/1(土)~11/16(日)]のみ

会期:
2025年11月1日(土)~12月7日(日)
開館時間:
10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:
毎週月曜日 
※ただし11/3、11/24(月・祝)は開館、翌火曜休館。
入場料:
一般 1,500円 (オンライン日時予約制) など
会場:
根津美術館 展示室1・2・5
〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1
連絡先:
TEL 03-3400-2536
公式サイト:
https://www.nezu-muse.or.jp

太田記念美術館:歌川広景 お笑い江戸名所

歌川広景(ひろかげ)は、浮世絵の専門家でもほとんど知られていない無名の絵師です。しかし近年、雪道で豪快に転ぶ江戸っ子や、文字通り達磨の形をした雪ダルマなど、太田記念美術館のSNSに投稿された広景の作品が大きな反響を呼んでいます。

広景は「東海道五拾三次之内」で著名な歌川広重の門人ですが、活動期間はたった3年弱と短く、どのような人物であるか、その正体も分かっていません。その広景の代表作が「江戸名所道戯尽」全50点。幕末の江戸を舞台にした「お笑い江戸名所」とも言えるシリーズです。野良犬に魚を盗まれたり、蕎麦を頭からかぶったり、タヌキやキツネに化かされたりと、江戸っ子たちの日常に起きた笑いのハプニングが満載。浮世絵の初心者でも気軽に楽しめる作品ばかりです。

太田記念美術館では2017年以来、8年ぶりに「江戸名所道戯尽」全50点を一挙に公開します。SNSで話題となった作品から、まだ知られていないレアな作品まで、広景のユーモラスな世界をたっぷりと堪能できます。さらに広重のもう一人の弟子である二代歌川広重の作品20点も同時公開します。広重一門の多彩な世界を味わえる貴重な機会です。

江戸名所道戯尽 廿二 御蔵前の雪
江戸名所道戯尽 廿二 御蔵前の雪
江戸名所道化尽 九 湯嶋天神の台
江戸名所道化尽 九 湯嶋天神の台

会期:
2025年11月14日(金)~12月14日(日)
開館時間:
10:30~17:30 ※入館は17:00まで
休館日:
11/17、25、12/1、8
入場料:
一般 1,000円 など
会場:
太田記念美術館
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
連絡先:
050-5541-8600 (ハローダイヤル)
公式サイト:
https://www.ukiyoe-ota-muse.jp

東京都美術館:上野アーティストプロジェクト2025「刺繍―針がすくいだす世界」

上野アーティストプロジェクト第9弾の本展では、布地などに針で糸を刺し、縫い重ねる手法によってかたちづくられた多彩な造形と表現に注目します。手に持った針を動かし、布の表裏の行き来を繰り返す「刺繍(ししゅう)」と呼ばれるような仕事は、つくり手に自分だけの世界に潜りこむことを促し、安らぎや自己解放、時に救済をももたらすものだと言われます。一方で、布地の補修や装飾、信仰などのため、様々な時代、様々な場所で土地の風土に根ざしながら発生してきたこの手わざは、時間・空間を隔てた他者の生活への想像力を働かせるきっかけともなり得るものです。

本展では、大正末から現在にいたる国内の5名の刺し手たちの活動をみつめます。それぞれが手を動かし、布の上にすくい上げた「かたち」と向き合うことで、針と糸というシンプルな道具とともに続けられてきたこのいとなみの意味と可能性について、考える機会となれば幸いです。

平野利太郎《サボテン》(部分) 1955年 町田市立博物館蔵
平野利太郎《サボテン》(部分) 1955年 町田市立博物館蔵
望月真理《象は森の王様》 2020年頃 個人蔵
望月真理《象は森の王様》 2020年頃 個人蔵

会期:
2025年11月18日(火)~2026年1月8日(木)
開室時間:
9:30~17:30 (金曜日:~20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休室日:
2025年12/1日(月)、12/15(月)、12/22(月)~2026年1/3(土)、1/5(月)
入場料:
一般 800円 など
会場:
東京都美術館 ギャラリーA・C
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
連絡先:
03-3823-6921
公式サイト:
https://www.tobikan.jp/2025_uenoartistproject

25.10.18
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